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退職直後に暴落が来たらどうなる?「順番」が生涯資産を左右する理由をシミュレーションで検証
シミュレーター活用

退職直後に暴落が来たらどうなる?「順番」が生涯資産を左右する理由をシミュレーションで検証

退職1年目に暴落が来ると資産寿命はどう変わるか、シークエンス・オブ・リターンズ・リスクを資産シミュレーターで1,000試行のモンテカルロ検証をしました。退職後の暴落タイミングが破綻確率に与える影響を実際の数値で確認できます。


資産を取り崩し始めてから、大きな暴落が来たらどうなるでしょうか。実は、同じ資産額・同じ取り崩し額で退職しても、「いつ」暴落に遭うかによって、その後の資産寿命は大きく変わることがあります。今回は、FREENOUGHの資産シミュレーターを使って、退職1年目の暴落タイミングが生涯資産にどれだけ影響するかを実際に試算してみました。平均的なリターンだけを見ていると、この「順番」の影響は見えてきません。

この記事の結論

  • 同じ資産額・同じ取り崩し額でも、暴落が「いつ」来るかによって資産が尽きる確率は大きく変わる
  • 今回の試算では、退職1年目に大きな下落が来ただけで、資産が尽きる確率が約31%→約73%まで上昇した
  • 積み立て期の暴落と違い、取り崩し期の暴落は「少なくなった元本」に対してその後の回復が乗るため、影響が長く尾を引く
  • 実際の老後生活は、公的年金や安全資産の有無などによって結果が変わる

シークエンス・オブ・リターンズ・リスクとは

平均利回りが同じでも、リターンの良い年・悪い年が「どの順番で来るか」によって、最終的な資産額が変わってしまう現象を「シークエンス・オブ・リターンズ・リスク(Sequence of Returns Risk)」と呼びます。資産を積み立てている間はこの影響は小さいのですが、取り崩している間は、最初の数年に悪い年が集中すると、その後どれだけ市場が回復しても取り返しがつかなくなることがあります。いわゆる4%ルールなど、一定の取り崩し率を前提とした資産計画でも、このリターンの順番は無視できません。

まずは、ご自身の想定利回りとリスクを資産シミュレーターで確認してみてください。

資産シミュレーターで検証する

検証条件

今回は、以下のようなシンプルな条件で検証しました。

  • 60歳で資産6,000万円を保有
  • 全額を全世界株式(オルカン相当)で運用
  • 年間200万円を取り崩す(初年度の取り崩し率は約3.3%)
  • 95歳まで(35年間)のシミュレーション

※この条件は、60歳時点の典型的な家計や、推奨される資産配分を示すものではありません。退職直後の市場下落が資産寿命に与える影響を分かりやすく比較するため、資産配分と収支条件を単純化した検証用のモデルです。公的年金・住宅費・医療費・税や社会保険料などは考慮していません。

この条件のもと、以下の3つのシナリオを、資産シミュレーターで実際に1,000通り試算して比較しました。

シナリオ 内容
A. 通常のシミュレーション 暴落する年を固定せず、通常通りランダムに試算
B. 中程度の下落が退職1年目に来た場合 退職1年目だけ、統計的にまれな水準の下落(年率約-38%)を固定し、2年目以降は通常通り試算
C. 非常に大きな下落が退職1年目に来た場合 退職1年目だけ、さらに大きな下落を固定し、2年目以降は通常通り試算

B・Cで固定した下落幅は、過去の大規模な金融危機を想起させる水準ですが、特定の年(2000年や2008年など)の値動きを再現したものではありません。あくまで「退職1年目にどの程度悪いことが起きるとどうなるか」を確認するための、統計的な仮定です。

なお、Cでは、統計上の計算式では約-56.7%の下落率になりますが、シミュレーターでは極端な値を抑えるため、下落率を±50パーセンテージポイントまでに制限しています。そのため、実際の試算では-50.0%を使用しています。

※B・Cのように「特定の年(この場合は退職1年目)だけ意図的に下落幅を固定する」という試算は、資産シミュレーターの通常の画面操作では再現できません。今回は記事執筆のため、シミュレーターの計算エンジンを直接使った専用の検証を行いました。ツール上でご自身の条件を試算する場合は、A(通常のシミュレーション)と同じ、暴落のタイミングを固定しないランダムな試算になります。

退職1年目の下落タイミングによる破綻確率の違い(A:約31〜32%、B:約58〜61%、C:約72〜75%)

試算結果

資産シミュレーターで実際に試算した結果は以下の通りです。

シナリオ 資産が尽きる確率(95歳までに)
A. 通常 約31%
B. 退職1年目に中程度の下落 約59%
C. 退職1年目に非常に大きな下落 約73%

※モンテカルロ・シミュレーションは乱数を使うため、実行するたびに結果が数ポイント程度変動します。上記は複数回試算した平均的な値です。

退職1年目のリターンだけを変えたところ、資産が尽きる確率にこれだけの差が生じました。

なぜこれほど大きな差が生まれるのでしょうか。積み立て期であれば、暴落後も追加投資を続けられます。一方、取り崩し期では、生活費を確保するために下落した資産を売却する必要が生じるため、回復の恩恵を受けるための元本が小さくなります。取り崩しをしながら資産が大きく目減りすると、その後の回復局面で「少なくなった元本に対して」市場が回復することになり、傷が長く尾を引きやすくなります。

積立期に暴落が来た場合と取崩期に暴落が来た場合の資産推移の違い

今回の試算で分かったこと【結論】

同じ長期的な期待リターン、同じ取り崩し額を前提としていても、最初の1年にどんなリターンが来るかによって、その後の35年間の結果は大きく変わります。 今回の検証用モデルでは、通常のシミュレーションで**約31%だった資産が尽きる確率が、退職1年目に大きな下落が重なっただけで約73%**まで上昇しました。

これは、平均的な利回りだけを見て資産計画を立てると見落としがちな、資産取り崩し期特有のリスクです。中央値(試算結果を並べた真ん中の値)だけを見て「多分大丈夫」と判断するのではなく、悪いケースでどの程度の確率で資産が尽きるかまで確認しておくことが重要です。

参考:過去の市場でも、大きな下落は繰り返し起きてきた

今回のシナリオは特定の年を再現したものではありませんが、過去に世界の株式市場が経験してきた下落の規模感を知っておくことは参考になります。米国のS&P500指数について、終値ベースでの高値から安値までの下落率(peak-to-trough)を見ると、ITバブル崩壊(2000年3月〜2002年10月)では約5割、リーマンショック(2007年10月〜2009年3月)では5割台後半、コロナショック(2020年2月〜3月)では3割台の下落を記録しています。

「絶対に起きない」とは言えない規模の下落が、退職直後に来る可能性は誰にでもあります。

自分の場合はどうなるか確認する

今回の検証はあくまで単純化したモデルです。実際の老後生活では、公的年金、現金・債券などの安全資産、住宅費、医療費、税・社会保険料などによって結果は大きく変わります。ご自身の資産配分・取り崩し額・年金額を反映した試算は、FREENOUGHの資産シミュレーターで確認できます。入力したデータは保存されず、3分程度で試算できます。

よくある質問

Q. シークエンス・オブ・リターンズ・リスクとは何ですか?

A. 平均利回りが同じでも、リターンの良い年・悪い年が来る順番によって、最終的な資産額が変わってしまう現象です。特に資産を取り崩している期間に影響が大きくなります。

Q. 4%ルールを守っていれば、暴落が来ても安心ですか?

A. 4%ルールは一つの目安ですが、暴落が来るタイミング次第で結果は変わります。今回の試算のように、退職直後に大きな下落が重なると、資産が尽きる確率が大きく上昇するケースがあります。

Q. 退職直後に暴落が来たら、どう対処すればよいですか?

A. 個別の対処法はご自身の状況によって異なりますが、取り崩し額を市場状況に応じて調整する、現金や債券などの安全資産を組み合わせておくといった方法が一般的に挙げられます。

Q. 今回の試算に、公的年金は考慮されていますか?

A. 考慮していません。今回は退職直後の暴落タイミングという1つの要因だけを見るための、単純化した検証用モデルです。年金を含めた試算は、資産シミュレーターでご自身の条件を入力してご確認いただけます。

まとめ

  • 同じ資産額・同じ取り崩し額でも、暴落が「いつ」来るかによって資産寿命は大きく変わります
  • 退職直後の下落は、積み立て期の下落よりも影響が大きくなります
  • 実際の老後生活は、年金・安全資産・支出条件などによって結果が変わるため、ご自身の条件での試算をおすすめします

この記事を読んで気になった方へ

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