資産シミュレーター
4%ルールは日本でも通用する?1,000通りのシミュレーションで検証してみた
FIRE基礎知識

4%ルールは日本でも通用する?1,000通りのシミュレーションで検証してみた

4%ルールを1,000通りのモンテカルロシミュレーションで検証。日本の税制・年金・退職金を踏まえると、平均値では枯渇しない計画でも約4人に1人が資産枯渇するという結果になりました。


FIREを目指す人なら一度は聞いたことがある「4%ルール」。資産の4%だけを毎年取り崩せば、理論上資産は尽きないという考え方です。シンプルでわかりやすい反面、「本当にこれだけで安心していいのか?」と不安になる人も多いはずです。

この記事では、4%ルールの基本的な考え方を整理したうえで、日本特有の制度(NISA・iDeCo・退職金・年金・税金)を踏まえるとどう変わるのか、そして実際にモンテカルロ法で1,000回シミュレーションした結果どうなったのかを、具体的な数字で見ていきます。

この記事の結論

  • 4%ルールは「目安」として参考になるが、そのまま日本で使うには無理がある
  • 日本では退職金・年金・iDeCoの一時金課税など、考慮すべき要素が多い
  • 単純計算では資産は枯渇しないが、市場変動を加味した1,000通りのシミュレーションでは約4人に1人(25.4%)が資産枯渇という結果になった
  • 単純計算だけで安心せず、変動リスクを織り込んだ試算が必要

4%ルールとは何か

定義・計算式

4%ルールとは、退職時点の資産の4%を初年度の取り崩し額とし、以降は物価上昇に合わせて取り崩し額を調整していけば、30年間資産が尽きる確率は低いという考え方です。1990年代にアメリカで行われた研究(トリニティスタディ)が元になっています。

計算式はシンプルです。

必要資産額 = 年間支出 ÷ 4%(= 年間支出 × 25)

たとえば年間支出が300万円なら、必要資産額は7,500万円という計算になります。

一般的に言われているメリット

  • 計算が単純で、誰でもすぐに自分の「FIREライン」を把握できる
  • 長期の株式運用を前提にしており、過去の米国市場データで一定の裏付けがある
  • 「資産額×25倍」という覚えやすい指標がFIREコミュニティで広く浸透している

一般的に言われている限界・注意点

一方で、4%ルールにはよく指摘される弱点があります。

  • 前提となっているのは米国株式市場の長期リターンであり、為替や日本市場にそのまま当てはまるとは限らない
  • 取り崩し開始直後に市場が暴落すると、その後回復しても資産寿命が大きく縮む(シークエンス・オブ・リターンズ・リスクと呼ばれる問題)
  • 30年間という前提期間が、FIRE後60年近く生きる可能性のある早期リタイア層には短すぎる場合がある

4%ルールの概念図

ここまでは一般的に語られる話ですが、日本で実際に計画を立てる場合は、もう一段踏み込んで考える必要があります。


日本の制度・実情で考えるとどうなるか

日本特有の要素

4%ルールはあくまで「投資資産の取り崩し」だけを想定したシンプルなモデルです。しかし日本でセミリタイアを考える場合、それ以外にも資産に影響する要素が多くあります。

  • NISA:非課税で運用できる一方、生涯投資枠には上限がある
  • iDeCo:60歳以降でないと引き出せず、受け取り方(一時金・年金)によって税金の計算が大きく変わる
  • 退職金:勤続年数によって退職所得控除が変わり、税負担が大きく変動する
  • 公的年金:65歳から受給が始まれば、それ以降の取り崩し額を大きく軽減できる
  • 資産取り崩し時の税金:特定口座からの取り崩しには20.315%の譲渡益課税がかかる

これらを考慮すると、「資産×25倍あればOK」という単純な基準だけでは、実際の資金繰りの形が見えてきません。年金が始まる65歳より前と後では、必要な取り崩し額がまったく違うからです。

一般論の前提が崩れるケース

4%ルールが想定する「毎年一定率で取り崩す」という前提も、実際の生活とはズレが生じがちです。退職直後は教育費や住宅ローンの返済が残っていて支出が大きく、年金受給が始まる頃には支出が落ち着く、という変化が一般的だからです。つまり、必要な取り崩し額は退職時点で一定ではなく、年齢によって変動するのが普通です。

一般論では「資産×25倍あればFIRE」で話が終わります。ここから先は、退職金・年金・税金・市場変動まで含めて、FREENOUGH 資産シミュレーターで実際に試算した結果を見ていきます。

ここまで読んで「自分の場合はどうなる?」と思った方は、一度試算してみてください。

資産シミュレーターで試算する


実際のシミュレーションで検証する

ここからは、実際に資産シミュレーターで試算した結果を見ていきます。今回はFIRE小説シリーズの主人公・田中誠さん(42歳・会社員・年間生活費480万円・総資産2,500万円)のケースを使います。55歳でのセミリタイアを目指し、退職後の年間支出は300万円に抑える計画です。

平均値ベースの試算 vs 1,000通り試算の違い

まず、利回りを年4%固定で単純計算すると、資産は以下のように推移します。

年齢 総資産
55歳(退職時) 7,367万円
60歳 6,965万円
65歳(年金開始) 6,242万円
70歳 6,154万円
80歳 5,933万円
90歳 5,277万円

この単純計算では、資産はまったく枯渇しません。90歳時点でも5,277万円が残る計画です。退職金やiDeCo一時金の受け取り、65歳からの年金開始によって資産は緩やかに減少し、70歳以降は年金効果で減少幅がさらに鈍化するという形です。

ただし、この数字はあくまで「毎年きっちり4%のリターンが出続けた場合」の話です。実際の市場はそんなに都合よくは動きません。

そこで、運用リターンが毎年ばらつく(標準偏差10%)という前提で、1,000通りの市場シナリオを試算するモンテカルロシミュレーションを実行しました。

破綻確率・資産寿命の読み方

一見すると、田中さんの計画は「資産が最後まで残る、安心できる計画」に見えます。実際、利回りが毎年きっちり4%で推移するという前提なら、90歳時点でも資産は残り、枯渇することはありません。

ところが、市場の値動きを毎年一定ではなくランダムに変動させ(標準偏差10%)、1,000通りの未来を試算してみると、景色は大きく変わりました。

項目 結果
破綻率(1,000試行・教育費込み・支出300万円) 25.4%(253通りで資産が枯渇)
65歳時点の資産(中央値) 5,527万円
65歳時点の資産(p10〜p90) 2,838万円 〜 1億565万円
90歳時点の最終資産(中央値) 3,099万円
90歳時点の最終資産(p10〜p90) 0万円 〜 1億6,500万円

中央値だけを見れば、90歳時点でも3,099万円が残る計画です。しかし、同じ初期条件であっても、市場環境次第で結果はここまで変わります。下位10%(p10)のシナリオでは、90歳時点の資産は0万円、つまり計画より前に枯渇してしまいます。一方で上位10%(p90)のシナリオでは1億6,500万円と、結果の幅そのものが極めて大きいことがわかります。

中央値とp10/p90の分布図

つまり、市場変動を織り込んだ1,000通りのシミュレーションでは、約4人に1人(25.4%)のシナリオで資産が尽きるという結果になりました。これが「平均値・中央値だけでは見えないリスク」です。

破綻率を下げるには

資産シミュレーターでは、条件を変えた場合の破綻率の変化も確認できます。田中さんのケースでは、以下のような結果になりました。

対策 破綻率 変化
現状(支出300万円・55歳退職) 25.4% -
支出を10%削減(270万円) 16.2% -9.2pt
退職を2年延長(57歳退職) 9.8% -15.6pt
余剰CFを全額投資 20.6% -4.8pt

支出削減よりも、退職時期を2年延ばす方が破綻率への影響が大きいという結果になりました。これは、退職を遅らせることで資産の取り崩し開始が遅れるだけでなく、その間の積立期間も伸びるためです。

対策別の破綻率比較


資産シミュレーターで分かったこと

1,000ケースで試算したところ、中央値シナリオでは90歳時点でも3,099万円の資産が残る計画でした。しかし、市場の変動を加味すると、約25%のケースで資産が90歳より前に尽きるという結果になりました。

「中央値では枯渇しない」と「実際には4人に1人が破綻する」は、まったく違う現実です。4%ルールやその他の単純な計算式は、あくまで平均的・中央値的な未来を示しているにすぎません。実際の資産形成・取り崩し計画では、悪いシナリオが起きた場合にどうなるかまで確認しておく必要があります。

さらに興味深いのは、破綻率を下げる効果が対策によって大きく異なる点です。田中さんのケースでは、生活費を10%削減するより、退職を2年延ばす方が破綻率を大きく下げる効果がありました(支出削減で-9.2pt、退職延長で-15.6pt)。これは、退職時期が「取り崩しを始める時期」と「積立を続けられる期間」の両方に影響するためで、単純な収支の計算だけでは見えてこない結果です。


自分の場合はどうなるか確認する

4%ルールが目安として有効かどうかは、年金の受給時期、退職金の有無、NISA・iDeCoの活用状況によって人それぞれ大きく変わります。

資産シミュレーターでは、ご自身の年齢・資産状況・支出額を入力するだけで、田中さんのケースと同じように、単純計算とモンテカルロ法による破綻確率の両方を確認できます。

  • 入力は5分程度
  • データはブラウザ内で処理され、保存されません
  • NISA・iDeCo・退職金・年金など日本の制度に対応

自分の資産で試算してみる


よくある質問

Q. 4%ルールは日本でも使えますか? A. 目安としては使えますが、そのまま当てはめるのはおすすめできません。日本では退職金・年金・iDeCoなど資産以外の収入源があり、これらを考慮しないと必要資産額を過大・過小に見積もる可能性があります。

Q. 暴落したらどうなりますか? A. 退職直後に市場が暴落すると、その後相場が回復しても資産寿命が大きく縮みます。これをシークエンス・オブ・リターンズ・リスクと呼びます。モンテカルロシミュレーションでは、こうした暴落シナリオも含めた1,000通りの試算で破綻確率を確認できます。

Q. 何歳まで資産が持てば安心ですか? A. 一般的には自分の余命(終端年齢)まで資産が持つことを目安にします。今回の田中さんのケースでは90歳を終端年齢として試算し、中央値シナリオでは枯渇しないものの、変動リスクを加味すると約25%の確率で90歳より前に資産が尽きるという結果でした。

Q. 年金は考慮されていますか? A. はい。資産シミュレーターでは公的年金の受給開始年齢・受給額を入力でき、試算に反映されます。今回のケースでは65歳からの年金受給が、その後の資産の安定に大きく寄与していました。


まとめ

  • 4%ルールはシンプルで目安として有用だが、日本でそのまま使うには制度面の考慮が不足しがち
  • 退職金・年金・iDeCo・NISAを含めて試算すると、単純な「資産×25倍」とは異なる必要資産額が見えてくる
  • 平均的・中央値的なシナリオで資産が枯渇しなくても、市場変動を加味すると一定確率で破綻するケースがある(今回は約25%)
  • 自分の数字で一度試算しておくことが、計画の精度を上げる一番の近道

田中誠さんのその後の物語は、note版「田中誠のFIRE挑戦記」シリーズでお読みいただけます。

この記事を読んで気になった方へ

FREENOUGH 資産シミュレーターで
あなたのFIRE達成時期を試算する

無料・登録不要・データは端末内に保存

無料で試す →

関連記事