早期退職の先にある、意外な壁
55歳で会社を辞めたい。
でも、公的年金は65歳から。
この10年間をどう過ごすかは、早期退職を考える人なら誰もが一度は悩むポイントです。
早期退職を考えるとき、多くの人が気にするのは「資産が足りるかどうか」です。しかし、実際にシミュレーションしてみると、もう一つの壁が見えてきます。それが、**退職から年金受給開始までの"空白期間"**です。
退職金や貯蓄はあっても、公的年金がもらえる65歳までは、収入がゼロになる期間が発生します。この期間、資産を取り崩し続けるだけでいいのか、それとも何らかの形で収入を確保すべきなのか。今回は、この問いをFREENOUGH 資産シミュレーターで検証してみます。
この退職金の手取り額が気になる方は、退職金手取り計算ツールで試算できます。
この記事の結論
- 55歳で完全退職しても、資産は90歳まで枯渇しない(約8,761万円が残る)
- ただし56〜65歳の10年間、無理なく収入を確保するだけで、90歳時点で約2,919万円の差になる
- 空白期間を全部埋めなくても、一部だけ埋めれば効果はしっかり出る
- 早い時期に得た収入ほど、運用期間が長くなり資産への効き方が大きい
- 自分の年齢・資産・退職金でどうなるかは、FREENOUGH 資産シミュレーターで確認できる

佐々木さんのケース
今回使うのは、53歳・会社員の佐々木誠一さん(仮名)のケースです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現在年齢 | 53歳 |
| 退職検討年齢 | 55歳 |
| 年金受給開始 | 65歳(空白期間は10年) |
| 退職金(55歳時) | 1,500万円 |
| 手取り収入 | 620万円/年 |
| 生活費 | 360万円/年 |
| 資産(53歳時点) | 6,889万円(NISA・iDeCo・特定口座・現金) |
| 配偶者 | 51歳、55歳退職予定、65歳から年金80万円/年 |
55歳で退職した場合、年金がもらえる65歳まで、10年間の空白期間が発生します。
55歳で完全退職した場合
まず、55歳で完全に退職し、その後は一切働かないケースをシミュレーションします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 退職時資産 | 約9,800万円 |
| 90歳時点資産 | 約8,761万円 |
| 資産寿命 | 90歳まで枯渇なし |
一見、十分すぎる結果に見えます。ただし、これはあくまで「資産が尽きるかどうか」という視点での結果です。空白期間中、資産は着実に目減りしていきます。
セミリタイアで年120万円働く場合
次に、55歳で会社を退職しつつ、56歳から65歳まで、週3日程度の仕事で年120万円の収入を得るケースを試算します。

| ケース | 90歳時点資産 |
|---|---|
| 完全退職 | 8,761万円 |
| セミリタイア(56〜65歳・年120万円) | 1億1,680万円 |
| 差額 | +2,919万円 |
年120万円の収入を10年間続けるだけで、90歳時点では約2,919万円の差になりました。
収入をゼロにするか、月10万円程度でも確保するか。この選択だけで、老後の資産に大きな幅が生まれることが分かります。
ここまで読んで「自分の場合はどうなる?」と思った方は、一度試算してみてください。
収入を得る期間を変えるとどうなる?
「10年間、週3日働き続ける」というのは、決して簡単な選択ではありません。では、この空白期間の一部だけを埋める場合、資産はどう変わるのでしょうか。同じ年120万円の収入で、期間だけを変えて比較してみます。

| 収入を得る期間 | 90歳時点資産 | 完全退職との差額 |
|---|---|---|
| なし(完全退職) | 約8,761万円 | - |
| 56〜60歳(5年間) | 約1億298万円 | +約1,537万円 |
| 56〜63歳(8年間) | 約1億1,146万円 | +約2,385万円 |
| 56〜65歳(10年間) | 約1億1,680万円 | +約2,919万円 |
この結果から分かることが2つあります。
1つ目は、空白期間の全部を埋めなくても、効果はしっかり出るということです。10年間まるごと働かなくても、最初の5年間だけ収入を確保すれば、90歳時点で約1,500万円の差が生まれます。
2つ目は、期間を延ばすほど効果は増えるが、増え方は一定ではないということです。5年→8年(+3年)で約850万円増えたのに対し、8年→10年(+2年)では約530万円の増加に留まっています。
これは複利の仕組みによるものです。55歳で得た120万円は、その後90歳まで35年間運用されます。一方、64歳で得た120万円は、90歳まで26年間しか運用されません。同じ120万円の収入でも、早く得るほど運用される期間が長くなるため、資産への影響が大きくなります。空白期間の中でも、より早い時期の収入の方が、資産全体への効き方が大きい、ということです。
資産シミュレーターで分かったこと
同じ「年120万円のセミリタイア収入」でも、それを何年続けるかによって、90歳時点の資産は約1,500万円〜約2,900万円の幅で変わりました。空白期間を全部埋める必要はなく、一部を埋めるだけでも、資産の増え方には明確な意味があります。
"空白期間をゼロにする"必要はない
早期退職を考えるとき、「収入をゼロにしていいのか」という不安は、多くの人が抱くものだと思います。しかし今回の結果が示すのは、空白期間を完全になくす必要はないということです。
- 完全に収入を絶っても、資産自体は90歳まで枯渇しない
- 一部の期間だけ収入を確保するだけでも、資産の増え方には明確な意味がある
- 「全部埋めるか、何もしないか」の二択ではなく、自分が無理なく働ける期間・金額を選べばいい
これは、早期退職を「オールオアナッシング」の決断にしなくていい、という考え方でもあります。空白期間の一部だけでも、自分のペースで収入を確保する。それだけで、その後の資産推移は大きく変わります。
自分の場合はどうなるか確認する
早期退職に必要なのは、「働くか、働かないか」の二択ではありません。自分に合った働き方で、空白期間をどう埋めるか。その違いを数字で確認してみてください。
あなたの退職年齢・資産・退職金を入力すれば、「空白期間を何年働けば十分か」を数分で確認できます。入力したデータは端末内に保存され、外部に送信されることはありません。
よくある質問
Q. セミリタイアの収入(年120万円)は、月にするといくらですか?
A. 月10万円程度です。週2〜3日程度のパートタイムや業務委託を想定した金額です。
Q. 空白期間が短い(早期退職年齢と年金開始年齢が近い)場合でも、この考え方は当てはまりますか?
A. はい。空白期間が短くても、その期間の一部に収入を確保する効果は同様に働きます。ご自身の年齢・退職金・資産状況を入力して試算することをおすすめします。
Q. 120万円より少ない収入でも意味がありますか?
A. はい。重要なのは「収入をゼロにしないこと」です。収入額が少なくても資産の取り崩しを抑えられるため、最終資産への影響があります。シミュレーターでは年収を自由に変更して試算できます。
Q. セミリタイア中の収入は、NISAやiDeCoに再投資できますか?
A. 現在のFREENOUGH 資産シミュレーターでは、退職後の収入は生活費に充てる想定で計算しており、NISA・iDeCoへの再投資は対象外です。退職前と同じペースで積立を続けたい場合は、退職年齢自体を調整して試算してみてください。
まとめ
- 55歳で完全退職しても資産は90歳まで枯渇しないが、空白期間中は資産が着実に目減りする
- 空白期間の一部だけでも収入を確保すれば、90歳時点の資産は大きく変わる
- 早い時期の収入ほど運用期間が長く、資産への効き方が大きい
※本記事は、FIRE小説シリーズに登場する佐々木誠一さんのケースを題材にした試算です。実際の税制・制度は個々の状況により異なるため、詳細な数値は目安としてご覧ください。
