[PR] 本記事にはアフィリエイト広告を含みます。紹介する内容は、シミュレーターの計算前提や比較検討の一例であり、特定の商品・サービスを推奨するものではありません。
年金は何歳からもらうべきか、繰り上げ・繰り下げのどちらが得かは、多くの方が一度は気になるテーマだと思います。制度上の増減率だけを見れば「何歳まで生きれば得か」という損益分岐年齢の話になりますが、実はそれだけでは見えてこない論点があります。繰り上げてもらった分を運用に回した場合、資産全体で見た有利・不利は年金額だけの比較とは異なる結果になることが、資産シミュレーターでの試算から確認できました。
この記事の結論
- 年金額だけなら80歳が損益分岐年齢ですが、資産全体で見ると結論は変わりました
- 今回の試算条件では、90歳時点まで資産全体での逆転は確認されませんでした
- 資産シミュレーターで試算したところ、この差に効いているのは「繰り上げ・繰り下げのタイミング」よりも「黒字を運用に回すかどうか」の方が大きいという結果になりました
- ただしこれは想定利回りを一定と置いた場合の話で、実際には市場変動(暴落リスクを含む)により結果は変わり得ます
- 記事内で使った条件を、そのまま自分の年金額に置き換えて試算できます
年金の繰り上げ・繰り下げとは(制度の基本)
老齢年金は原則65歳から受給が始まりますが、希望すれば60歳まで繰り上げる、または75歳まで繰り下げることができます。受給開始年齢を早める・遅らせることで、受け取る年金額そのものが増減する仕組みです。
増減率のルール
- 繰り下げ:1ヶ月繰り下げるごとに+0.7%、65歳から75歳まで最大10年繰り下げると+84%になります
- 繰り上げ:1ヶ月早めるごとに-0.4%(新率)または-0.5%(旧率)減額されます。60歳まで繰り上げると新率で-24%です
新率・旧率の分岐
繰り上げの減額率には新率(-0.4%/月)と旧率(-0.5%/月)があり、1962年4月2日生まれ以降かどうかで適用される率が分かれます。これは見落とされがちなポイントで、自分がどちらに該当するかを確認しておく必要があります。
一般的に言われているメリット・限界
繰り下げは年金額そのものを増やせる一方、受給開始まで生活費を他の資産で賄う必要があります。繰り上げは早くから受け取れる安心感がある一方、一度選択すると取り消せず、生涯にわたって減額された金額が続きます。
「何歳まで生きれば得か」という損益分岐年齢の考え方は広く知られていますが、これはあくまで年金額だけを見た場合の話である点に注意が必要です。
日本の実情で考えると:繰り上げて運用に回すべき、という意見もある
繰り上げ・繰り下げの選択には、平均寿命・健康寿命との関係や、在職老齢年金・税金(年金は雑所得として課税されます)など、単純な損益分岐年齢だけでは語れない要素が絡みます。
その中でも特によく見かけるのが、「繰り上げて早くもらい、その分を運用に回した方が得なのではないか」という意見です。実際、この立場を取る専門家によるコラムも存在します。一方で、「年金は国が破綻しない限り一生涯受け取れる安全資産であり、目先の増額を狙って繰り上げるべきではない」という、対照的な立場の専門家の見解もあります。
この対立、実は「感覚」で終わらせず、自分の年金見込み額・生活費・想定運用利回りを入れて実際に試算することができます。年金受給タイミング比較シミュレーターで繰り上げ受給時の年金額を算出し、資産シミュレーターに転記すれば、「繰り上げ+運用」と「65歳受給」で資産推移がどう変わるかを比較できます。この記事の後半で、実際に試算した結果を紹介します。
ここまで読んで「自分の場合はどうなる?」と思った方は、まずは60秒で、自分の損益分岐年齢だけ確認してみてください。年金受給タイミング比較シミュレーター
資産シミュレーターで検証する
年金額だけで見た場合の試算
老齢基礎年金78万円・老齢厚生年金120万円(新率適用)というモデルケースで、受給開始年齢ごとの年額と、65歳受給との差額・損益分岐年齢を実際に試算しました。
| 受給開始 | 年額 | 65歳との差額 | 損益分岐年齢(65歳比) | 90歳時点累計受給額 |
|---|---|---|---|---|
| 60歳 | 150万円/年 | -48万円/年(-24.2%) | 80歳 | 4,650万円 |
| 65歳(基準) | 198万円/年 | ± 0 | ― | 5,148万円 |
| 70歳 | 281万円/年 | +83万円/年(+41.9%) | 81歳 | 5,901万円 |
| 75歳 | 365万円/年 | +167万円/年(+84.3%) | 86歳 | 5,840万円 |

これは年金額だけを比較した結果です。ここからは、繰り上げ分を運用に回した場合に資産全体でどう変わるかを見ていきます。
資産全体で見た場合の試算(3パターン比較)
以下の条件で、資産シミュレーターを使って3つのプロファイルを試算しました。
- 単身・退職年齢60歳・年間生活費120万円・退職時点の資産は特定口座のみ3,000万円
- 想定利回りは年4%(NISA・iDeCo・特定口座すべて共通)
- インフレ率は0% としています。年金額は名目金額で固定されるため、生活費側だけをインフレで上昇させると、年金額の絶対的な高低とは別に「名目固定の年金がインフレで目減りしていく」という、この記事の主題(運用効果とタイミング効果)とは異なる要因が混ざってしまいます。この効果を排除するため、生活費も一定という前提にしています
この生活費(120万円/年)は、繰り上げ受給時の年金額(150万円/年)との間に黒字が生まれる条件を作るために、検証用に設定した金額です。実際の生活費とは異なる、便宜的な前提である点にご留意ください。
比較したのは次の3パターンです。
- A:65歳受給・黒字を運用に回さない(現金のまま保有)
- B:60歳繰り上げ受給・黒字を運用に回す
- C:65歳受給・65歳以降の黒字を運用
Cを加えているのは、Bの有利・不利が「繰り上げのタイミング」と「黒字運用」のどちらから来ているのかを切り分けるためです。

90歳時点の総資産は次のようになりました。
| プロファイル | 90歳時点総資産 |
|---|---|
| A(65歳・運用なし) | 10,305万円 |
| B(60歳・運用あり) | 11,899万円 |
| C(65歳・運用あり) | 11,734万円 |
これは、毎年確実に年4%の利回りを得られると仮定した場合の試算結果です。次のセクションで、この結果から分かったことをまとめます。
今回の試算で分かったこと【結論】
繰り上げ・繰り下げそのものより、黒字を運用に回すかどうかの方が、資産全体への影響が大きいという結果になりました。
A・B・Cの差を要因ごとに分解すると、次のようになります。
- 黒字運用のみの効果(C−A):+1,429万円(+13.9%)
- 繰り上げタイミングのみの効果(B−C):+165万円(+1.4%)
90歳時点でBがAを上回る差額(+1,594万円)のうち、90%は「黒字を運用に回したこと」が要因でした。(※今回の試算条件に基づく要因分解です。) 「60歳で繰り上げたか65歳のままか」という選択自体の寄与は10%程度にとどまっています。この試算条件では、2つの効果はほぼ単純な足し算になっており、相乗効果は確認されませんでした。
今回の試算条件では、繰り上げ受給(B)・65歳受給(C)とも、年金額が生活費(120万円/年)を上回る黒字期間は生涯を通じて続く結果となりました。生活費を一定に保つ前提(インフレ率0%)のため、年金額さえ生活費を上回っていれば、その差額は生涯にわたって運用に回り続けます。
ただし、これは想定利回り年4%を毎年確実に得られるという前提での試算です。実際には市場の変動があるため、この結果をそのまま「運用すれば必ず得」と読み替えることはできません。
同じ3プロファイルをモンテカルロ法(1,000通りの市場変動シナリオ)で試算すると、次のような結果になりました。
| プロファイル | 悪いケース(下位10%) | 中央値 | 良いケース(上位10%) | 分布の幅 |
|---|---|---|---|---|
| A(65歳・運用なし) | 5,460万円 | 9,096万円 | 16,592万円 | 11,132万円 |
| B(60歳・運用あり) | 5,536万円 | 10,517万円 | 19,539万円 | 14,003万円 |
| C(65歳・運用あり) | 5,872万円 | 10,537万円 | 19,542万円 | 13,670万円 |

中央値で見れば運用ありのB・Cが依然として有利ですが、分布の幅(悪いケースと良いケースの差)は運用ありの方が大きくなっています。黒字を現金のまま保有するAは市場変動の影響を受けない分、資産の振れ幅も小さく安定していました。今回の試算(初期資産3,000万円)では、いずれのプロファイルも1,000通りの試算中に資産が枯渇したケースはありませんでしたが、これは初期資産に余裕があったためで、初期資産が少ない場合はこの限りではありません。
つまり、今回の試算条件(想定利回り年4%・生活費120万円・初期資産3,000万円・インフレ率0%)では「繰り上げて運用に回した方が中央値としては有利」という結果が確認できた一方、「運用に回すほど資産の振れ幅も大きくなる」というリスクとのトレードオフがある、というのがこの試算から言えることです。
自分の場合はどうなるか確認する
ここまでの試算は、あくまで一例(老齢基礎年金78万円・老齢厚生年金120万円・生活費120万円等)の条件によるものです。ご自身の年金見込み額・生活費・保有資産では結果が変わります。
以下の手順で、自分の条件での試算ができます。
- 年金受給タイミング比較シミュレーターで、繰り上げ・繰り下げ受給時の年金額を算出する
- 資産シミュレーターの「年金受給開始」「年金受給額」欄に、算出した年額を転記する
- 「退職後の収支黒字を運用する」をONにする
- 受給開始年齢を変えたプロファイルをそれぞれ試算し、資産推移を比較する
なお、手順3で使う想定利回りは、資産シミュレーター側の運用利回り設定(取崩期)がそのまま使われます。この記事の試算では年4%としましたが、ご自身の運用方針に応じて調整してください。
入力したデータはブラウザ内での試算にとどまり、保存されません。3分程度で試算できますので、気になる方は一度試してみてください。
なお、この試算では黒字を特定口座で運用する前提としていますが、まだ証券口座をお持ちでない方は、口座開設先の一例として証券会社の情報を確認しておくのもよいかもしれません。
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よくある質問
Q. 繰り下げ受給は年金額が減ることはありますか?
繰り下げ受給そのもので年金額が減ることはありません。1ヶ月繰り下げるごとに+0.7%増額される仕組みです。ただし、繰り下げ待機中に亡くなった場合など、実際に受け取れる総額が短くなるケースはあります。
Q. 在職老齢年金の影響はありますか?
厚生年金に加入しながら働き続ける場合、給与と年金の合計額に応じて年金の一部が支給停止になる制度(在職老齢年金)があります。繰り下げを選択している間に就労している場合、この停止分は繰り下げによる増額の対象にならない点に注意が必要です。
Q. 何歳まで生きれば得ですか?
年金額だけで比較した場合、今回の試算条件(基礎78万円・厚生120万円・新率)では、60歳受給と65歳受給の損益分岐年齢は80歳という結果が出ています。ただし、この年齢は年金額・生年月日区分によって変わります。
Q. 繰り上げ分を運用に回すと本当に得ですか?
今回の試算条件(想定利回り年4%・生活費120万円・初期資産3,000万円・インフレ率0%)では、運用に回した方が資産形成上有利という結果になりました。ただし、これはこの条件下での結果であり、想定利回りや市場変動によって結果は変動するため、「必ず得」とは言い切れません。ご自身のリスク許容度に応じて判断する必要があります。
Q. 損益分岐年齢を過ぎても、繰り上げ受給の方が有利になることはありますか?
損益分岐年齢は、年金額だけを比較した場合の交点です。繰り上げ受給分を早期から運用に回していた場合、その運用益によって、年金額だけで見た損益分岐年齢を過ぎても、資産全体では繰り上げ側が有利であり続けるケースがあります。実際にどちらが有利かは、運用利回り・比較する年齢によって変わるため、資産シミュレーターでの試算をおすすめします。
Q. 繰り上げ受給したあとで65歳受給へ戻せますか?
原則できません。繰り上げ受給は一度請求すると取り消しや変更ができず、減額された年金額が生涯続きます。選択前に十分検討することをおすすめします。
まとめ
- 年金の繰り上げ・繰り下げは、年金額だけで見た損益分岐年齢と、資産全体で見た場合の有利・不利が異なることがあります
- 今回の試算では、繰り上げ・繰り下げのタイミングよりも、黒字を運用に回すかどうかの方が資産全体への影響が大きいという結果になりました
- ただし運用には市場変動のリスクが伴うため、試算結果の良し悪しだけでなくリスクの幅も踏まえて判断することをおすすめします
