iDeCoは60歳以降、積み立てた資産を「一時金」「年金」「併用」のいずれかで受け取れます。この選び方によって、同じ残高でも手取り額に差が出ることがあります。この記事では、退職金がないケースを想定したモデルケースで、資産シミュレーターの計算ロジックを使って実際にどれくらいの差が出るのかを試算しました。今回の条件では一時金受け取りが最も手取りが多くなりましたが、退職金の有無や受給時期によって結果は変わります。
この記事の結論
- iDeCoの受け取り方には一時金・年金・併用の3種類があり、それぞれ適用される控除の仕組みが異なります
- 一時金は退職所得控除に加えて「控除後の金額をさらに1/2にする」仕組みがあり、税負担が軽くなりやすい特徴があります
- 試算したモデルケース(60歳時点残高1,612万円・退職金なし)では、一時金受け取りが最も手取り額が大きく、年金受け取りとの差は最大で約102万円になりました
- 年金は受給期間を長く取るほど(10年より20年の方が)、今回の条件では手取りが増える結果になりました
- 「一時金が有利」という傾向自体は一般的にも言われていますが、この記事の独自性はその差を具体的な金額で試算した点にあります
- 退職金がある場合や公的年金の受給額が異なる場合は結果が変わるため、資産シミュレーターで自分の条件を確認することをおすすめします
iDeCoの受け取り方は3種類
iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降に次の3つの方法で受け取れます。
一時金
積み立てた資産を一括で受け取る方法です。税制上は「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。さらに、退職所得は「(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2」という計算式で求められ、控除後の金額がさらに半分になる点が大きな特徴です。この「控除+1/2課税」の組み合わせにより、他に退職金がない場合は税負担がかなり軽くなりやすい受け取り方です。
年金
資産を一定期間に分けて、年金のように定期的に受け取る方法です。多くの運営管理機関では5年以上20年以下の期間(有期年金)から選べ、一部の運営管理機関では終身年金として受け取れる場合もあります。税制上は「雑所得(公的年金等)」として扱われ、公的年金等控除が適用されますが、一時金のような1/2課税の仕組みはありません。また、公的年金(厚生年金・国民年金)と合算して所得計算されるため、公的年金の受給額が多い人ほど控除の枠を公的年金側で使ってしまい、iDeCo分に残る控除枠が小さくなる場合があります。
併用
一時金と年金を組み合わせて受け取る方法です。金融機関によって選べる割合が異なります。一時金部分は退職所得控除+1/2課税、年金部分は公的年金等控除と、双方の仕組みを部分的に使えるのが特徴です。
一般的には「退職金がない、または少ない人は一時金が有利になりやすい」と言われることが多く、これは事実として間違いではありません。ただし「どれくらい有利なのか」は条件によって大きく変わるため、次のセクションで実際に金額を試算しました。
一時金と年金では、そもそも差し引かれる控除の種類と計算の仕組みが異なります。

小さなCTA
自分の残高・受給期間だとどうなるか、まずは60秒で試算してみてください。 →iDeCo受取シミュレーター
試算してみる:モデルケースで比較
資産シミュレーターの計算ロジックを使って、次のモデルケースを試算しました。
試算条件
- 32歳でiDeCo加入、60歳まで28年間、月23,000円を積み立て(想定利回り年5%)
- 60歳時点の想定残高:1,612万円
- 公的年金(参考):年180万円(税引前)。これは厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による老齢厚生年金(基礎年金含む)の全体平均受給額を参考にした値で、個別の年金見込額ではありません
- 退職金・その他の所得はなし
一時金・年金(10年/20年で受給)・併用(iDeCo分を一時金:年金=1:1で分けた場合)の手取り額を試算した結果は以下の通りです。
| 受け取り方 | 受給期間 | 手取り額(iDeCo分) | 一時金との差額 |
|---|---|---|---|
| 一時金 | — | 約1,593.0万円 | — |
| 年金 | 10年 | 約1,490.6万円 | −約102.4万円 |
| 年金 | 20年 | 約1,509.6万円 | −約83.4万円 |
| 併用(1:1) | 10年 | 約1,560.8万円 | −約32.2万円 |
| 併用(1:1) | 20年 | 約1,568.1万円 | −約24.9万円 |
※上記は公的年金分を含まない、iDeCo分の手取り額です。実際の家計全体の手取りは、これに公的年金の手取り額を別途加算した金額になります。 ※併用パターンの税額は、一時金部分と年金部分それぞれの税額を、比例配分(グロス金額の比率で機械的に按分)して算出した近似値です。控除枠をどちらに先に当てはめるかによって結果が変わる方式(差分方式)は採用していません。
なぜ受給期間が長いほど手取りが増えるのか
年金として受け取る金額を長い期間に分散するほど、1年あたりの雑所得が小さくなります。今回のモデルケースでは、10年受給だと年間約149万円、20年受給だと年間約75万円とほぼ半分になり、公的年金と合算しても課税対象となる所得を抑えやすくなります。ただし、これは今回の条件(公的年金180万円・他の所得なし)における傾向であり、受給期間を延ばせば延ばすほど常に有利になるとは限りません。
一時金が有利という傾向自体は一般的に知られていますが、今回のモデルケースで確認できたのは、同じ残高(1,612万円)でも受け取り方によって最大で約102万円の差が生まれるという具体的な金額です。この差は、一時金にだけ適用される1/2課税の効果と、年金が公的年金と合算されることの2点によって生まれています。
この試算条件で分かったこと【結論】
今回のモデルケース(60歳時点残高1,612万円・公的年金年180万円・退職金なし)では、一時金受け取りが最も手取り額が大きく、年金(10年受給)との差は約102万円になりました。 ただし、これは退職金がないケースの試算です。退職金がある場合は一時金同士の合算課税(退職所得控除の枠の使い方)によって結果が変わる可能性があります。
自分の場合はどうなるか確認する
今回は「退職金なし・公的年金180万円」というモデルケースでした。退職金がある場合や、公的年金の受給見込額が異なる場合は、結果が変わる可能性があります。
資産シミュレーターの「iDeCo受取シミュレーター」では、自分の残高や受給期間を入力して、一時金・年金・併用それぞれの手取り額を試算できます。入力データはブラウザ上で計算され、保存されません。30秒ほどで、自分の条件に置き換えて確認できます。
よくある質問
Q. 一時金と年金、どちらが得ですか?
条件によって変わります。今回のモデルケース(退職金なし)では一時金の方が手取りが大きい結果になりましたが、退職金がある場合や公的年金の受給額が少ない場合は、年金・併用が有利になるケースもあります。
Q. iDeCoの年金は何年間受け取れますか?
多くの運営管理機関では5年以上20年以下の期間(有期年金)から選べます。一部の運営管理機関では、終身年金として受け取れる場合もあります。
Q. 一時金と年金は、受給を始めた後に変更できますか?
原則として、一度選択した受け取り方法は変更できません。受給を開始する前に、税額のシミュレーションなどで慎重に検討することが必要です。
Q. 税金はいつ、どのように支払いますか?
一時金は退職所得として、原則受給時に源泉徴収されます。年金は雑所得として毎年課税され、他の所得の状況によっては確定申告が必要になる場合があります。
Q. 住民税もかかりますか?
はい。一時金・年金のいずれも、所得税に加えて住民税の課税対象です。
Q. 退職金がある場合はどう考えればいいですか?
iDeCoの一時金と退職金は、退職所得として合算して課税される場合があります。この記事では退職金がないケースのみを扱っているため、退職金と同時に受け取る場合の試算は別記事で解説予定です。
まとめ
- iDeCoの受け取り方には一時金・年金・併用があり、適用される控除の仕組みが異なります
- 一時金には「控除後さらに1/2課税」という仕組みがあり、これが税負担の差の大きな要因になります
- 試算したモデルケースでは、一時金受け取りと年金受け取り(10年)の手取り差は約102万円になりました
- 退職金の有無や公的年金の受給額によって最適な選び方は変わるため、自分の条件でシミュレーターを使って確認することをおすすめします
