完全リタイアと会社員の間にある選択肢。一人法人という働き方
FIREという言葉を聞くと、「働くのをやめて、資産だけで生活する」というイメージを持つ方が多いかもしれません。FREENOUGHの資産シミュレーターも、多くの方が「何歳でリタイアできるか」「資産はいつまで持つか」を確認する目的で使っています。
ただ、FIREを目指す道のりの中で、「完全に働くのをやめる」か「今の会社員を続ける」かの二択だけで考える必要はありません。この記事では、一人法人を通じて働き方をコントロールしながら資産形成を続けるという、もう一つの選択肢について整理します。
この記事の結論
- FIREは「完全に働かないこと」だけを意味するものとして捉えられがちですが、FREENOUGHでは「生活のために働かなければならない状態から抜け出し、働き方を自分で選べる状態」と考えています
- 会社員を辞めた後も、一人法人を通じて収入を得ながら資産形成を続けるという選択肢があります
- 完全リタイアと会社員の間には、「働き方や収入の量を自分でコントロールできる」という中間的な状態が存在します
- 一人法人はこの中間的な状態を作るための手段の一つであり、必須の選択肢ではありません
FIREとは何を目指すことなのか、あらためて考える
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略で、直訳すれば「経済的自立と早期リタイア」です。ただ、この言葉が広まる過程で、「早期リタイア」の部分だけが強調され、「一切働かない状態を目指すもの」というイメージが先行しているように見えます。
経済的自立(Financial Independence)の部分に着目すると、別の捉え方もできます。FREENOUGHでは、これを「生活のために働かなければならない」という制約から自由になることと考えており、その先に「完全に働かない」を選ぶか、「働き方を自分で選べる状態で働き続ける」を選ぶかは、人によって異なるものだと考えています。
FREENOUGHがブランドとして大切にしている「Enough(足りる)」という考え方も、この延長線上にあります。何が自分にとって十分な資産・収入・働き方なのかは人それぞれであり、「完全リタイアだけが正解」という前提に立つ必要はありません。
完全リタイアと会社員の間にある選択肢
会社員を続けるか、完全にリタイアするか。この二択で考えると、選択肢は限られます。しかし実際には、次のような働き方の違いが存在します。
- 会社員として雇用され、決められた時間・条件で働き続ける
- 会社員を辞め、個人事業主やフリーランスとして、雇われない形で働く
- 会社員を辞め、一人法人を通じて、雇われない形で働く
- 資産からの取り崩しを中心にしながら、必要に応じて収入を得る
- 資産のみで生活し、労働による収入を持たない(完全リタイア)
これらは対立する選択肢ではなく、人によって、あるいは人生の時期によって、行き来するものだと考えることもできます。会社員から一人法人に移り、そこから将来的に労働時間を減らしていく、という流れも考えられますし、逆に一人法人での活動が軌道に乗ることで、当初想定していたFIREのタイミングが変わることもあります。
一人法人は、このうち「雇われない形で働き続ける」という選択肢を実現する手段の一つです。個人事業主という選択肢と比べると、税金・社会保険の扱いが異なる、法人としての契約主体になれるといった違いがありますが(この点は次回以降の記事で詳しく扱います)、「会社員でも完全リタイアでもない」という位置づけ自体は共通しています。
資産形成の観点で見ると何が変わるのか
完全リタイアを前提にした資産形成の計画では、「リタイア後は資産からの取り崩しのみで生活する」という前提を置くことが一般的です。この場合、必要な資産額は、生活費・想定される運用利回り・取り崩し期間などから算出されます。
一方、リタイア後も何らかの収入源がある場合、必要な資産額の考え方は変わります。生活費の一部を収入で賄えるのであれば、資産からの取り崩しに頼る割合は下がり、資産形成にかかる期間や必要な資産額の水準も、完全リタイアを前提にした場合とは異なってきます。
FREENOUGHの資産シミュレーターでは、退職後の収入を考慮した試算ができる設計になっており、完全リタイアだけでなく、こうした「収入を得ながら資産を取り崩す」というケースも扱えます。一人法人を通じた収入も、この「リタイア後の収入」の一種として考えることができます。
ここでいう「収入」は、法人の売上そのものではなく、最終的に個人の生活を支えるために使える収入という意味で考えます。法人を通じて得た売上が、そのまま個人の所得になるわけではない点には注意が必要です。法人の売上・利益と、代表者個人が受け取る役員報酬などの違いについては、次回以降の記事で整理します。
ただし、一人法人からの収入は会社員の給与のように安定しているとは限りません。事業の状況によって変動する可能性がある点は、完全リタイアを前提にした計画とは異なるリスクとして考慮する必要があります。
まずは、完全リタイアを前提にした場合に必要な資産額を確認してみてください
一人法人という選択肢を検討する前に、まずは「完全に働かない」と仮定した場合に必要な資産額を把握しておくと、働き方を変えることでその数字がどう動きうるかを考えやすくなります。資産シミュレーターで試算する
よくある質問
Q. 一人法人を作ればFIREが早まりますか? 一律には言えません。一人法人からの収入がある分、資産からの取り崩しに頼る割合が下がる可能性はありますが、法人の維持コストや事務負担、収入の変動リスクも同時に発生します。メリット・デメリットの両方を踏まえて考える必要があります。
Q. 会社員を辞めずに一人法人を作ることはできますか? 制度上は可能な場合がありますが、勤務先の副業規定や社会保険の扱いなど、確認すべき点があります。具体的な条件については、今後の記事で整理します。
Q. 完全リタイアと一人法人、どちらを目指すべきですか? どちらが正解ということはなく、生活費の水準、資産の状況、働くこと自体への考え方によって異なります。FREENOUGHでは、両方を比較検討できるよう、それぞれの視点からの情報を用意しています。
Q. 一人法人での収入が不安定な場合、資産形成の計画はどう考えればいいですか? 収入が変動する可能性がある前提で、完全リタイアの場合よりも保守的な想定を置く、資産の取り崩しに頼らずに済む期間と、頼る可能性がある期間を分けて考える、といった方法があります。この点は今後の記事でさらに掘り下げます。
まとめ
- FIREは「完全に働かないこと」だけでなく、「生活のために働く必要性を下げること」とも捉えられます
- 完全リタイアと会社員の間には、一人法人を通じて働き方をコントロールしながら資産形成を続けるという選択肢があります
- 一人法人からの収入は資産形成の計画に影響しますが、収入の変動リスクも同時に考慮する必要があります
- 次回は、一人法人を作った場合に税金・社会保険がどう変わるのかを整理します