「複利は早く始めた方がいい」「利回りが1%違うだけで将来大きな差になる」——どちらもよく聞く話ですが、実際にはどちらの影響がどれくらい大きいのか、具体的な数字で比較されることは意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、資産シミュレーターの計算エンジンを使い、毎月3万円の積立を条件に、運用年数(20年・30年・40年)と利回り(3%・5%・7%)を組み合わせた9パターンを試算しました。
この記事の結論
- 運用年数を延ばす効果と、利回りを上げる効果は、単純に足し算では比較できません
- 同じ「年数を20年延ばす」でも、利回り3%のときと7%のときとでは、増える金額の大きさがまったく違います
- 今回の試算条件(月3万円・利回り一定)では、利回りが高いほど、年数を延ばした効果がより大きく増幅されるという結果になりました
- 「年数」か「利回り」かを単独で語るより、「利回り×年数」の掛け算で考えた方が、複利の実態に近づきます
複利とは何か
複利とは、運用で得た利益をそのまま元本に組み入れて再投資し、その利益にもさらに利益がつく仕組みのことです。単利(元本にのみ利益がつく方式)と対比されることが多く、「利益が利益を生む」という表現がよく使われます。
毎月一定額を積み立てながら複利で運用する場合、将来の資産額は主に次の3つの要素で決まります。
- 毎月の積立額
- 想定利回り(年率)
- 運用年数
この3つのうち、「利回り」と「運用年数」はどちらも将来資産に大きな影響を与える一方で、どちらがどれくらい効くのかは直感的にわかりにくい部分です。よく言われる「複利は早く始めた方が有利」という話も、実際にどの程度の差になるのかまでは語られないことが多いように見えます。
単利と複利では、資産の伸び方のカーブが異なります(イメージ図)
一方で、複利には注意点もあります。運用資産は元本保証ではなく、想定通りの利回りが実際に得られる保証はありません。市場の変動によって、ある年は資産が増え、ある年は減ることもあります。この記事の試算はあくまで「一定の利回りが続いた場合の理論値」であり、実際の値動きを考慮した試算については後半で改めて触れます。
ここからは、年数を延ばす効果と、利回りを上げる効果を、それぞれ切り分けて確認していきます。
まずは60秒で、ご自身の条件(積立額・利回り・年数)を入力して将来資産を確認してみてください。この記事の試算と同じ計算エンジンを使っています。
シミュレーションで検証する
検証条件
資産シミュレーターの計算エンジン(複利計算ツールと同じ計算式)を使い、以下の条件で試算しました。
- 現在資産:0円
- 毎月の積立額:3万円
- 実際のシミュレーション結果として、以下の年数・利回りパターンを比較
検証A:運用年数を変えるとどうなるか(利回り5%で固定)
利回りを年5%に固定し、運用年数だけを20年・30年・40年で変えた場合の結果です。
| 積立年数 | 元本 | 運用益 | 最終資産 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 720万円 | 470万円 | 1,190万円 |
| 30年 | 1,080万円 | 1,312万円 | 2,392万円 |
| 40年 | 1,440万円 | 2,909万円 | 4,349万円 |
元本は年数に比例して増えていくのに対し、運用益は20年→30年で約2.8倍、30年→40年で約2.2倍というペースで加速していきます。40年時点では、運用益(2,909万円)が元本(1,440万円)を大きく上回っている点が特徴的です。
では、運用年数を30年に固定した場合、今度は利回りの違いがどれくらい効くのでしょうか。
検証B:利回りを変えるとどうなるか(運用年数30年で固定)
今度は運用年数を30年に固定し、利回りだけを3%・5%・7%で変えた場合の結果です。
| 年利 | 元本 | 運用益 | 最終資産 |
|---|---|---|---|
| 3% | 1,080万円 | 633万円 | 1,713万円 |
| 5% | 1,080万円 | 1,312万円 | 2,392万円 |
| 7% | 1,080万円 | 2,321万円 | 3,401万円 |
元本はどのケースも同じ1,080万円ですが、利回りが上がるほど運用益の伸びが大きくなり、3%と7%では最終資産に約1.7倍の差がついています。
検証C:年数×利回りのクロス表(この記事の核心)
検証A・Bはそれぞれ単独で見ると「なるほど、両方とも効くのか」で終わってしまいます。実際にどう効くのかを確認するため、9パターンすべての運用益を一覧にしたのが以下の表です。
| 運用益(万円) | 利回り3% | 利回り5% | 利回り7% |
|---|---|---|---|
| 20年 | 247 | 470 | 756 |
| 30年 | 633 | 1,312 | 2,321 |
| 40年 | 1,274 | 2,909 | 5,747 |
運用年数と利回りを掛け合わせると、運用益の伸び方そのものが変わってきます
この表を見ると、利回りと運用年数は足し算ではなく、掛け算のように効いていることがわかります。単純に「年数分・利回り分がそれぞれ足される」のではなく、両者が組み合わさることで運用益の伸び方そのものが変わってくるということです。
実際に、列(利回り)ごとに20年から40年へ延ばしたときの運用益の伸び方を倍率で見ると、次のような違いが出ます。
- 利回り3%の列:運用益は247万円→1,274万円(約5.2倍)
- 利回り5%の列:運用益は470万円→2,909万円(約6.2倍)
- 利回り7%の列:運用益は756万円→5,747万円(約7.6倍)
同じ「年数を20年延ばす」という条件でも、利回りが高い列の方が、年数を延ばしたことによる伸び幅がより大きくなっています。
今回の試算で分かったこと【結論】
今回の試算を通して見えてきたのは、そもそも「年数と利回り、どちらが重要か」という問いの立て方自体が、複利の実態にはあまり合っていなかったということです。
今回の条件(月3万円積立・現在資産0円)から分かったことは、次の3つです。
- 運用年数だけでは、資産の伸び方は決まりません
- 利回りだけでも、資産の伸び方は決まりません
- 利回りが高いほど、運用年数を延ばした効果はさらに大きくなります
具体的には、利回り7%で20年から40年に延ばした場合、運用益は756万円から5,747万円へと約7.6倍に増えています。一方、利回り3%で同じように20年から40年に延ばした場合は、247万円から1,274万円と約5.2倍にとどまっています。同じ「20年延長」でも、利回りの水準によって効果の大きさが変わるという結果です。
これは、複利では「利益にも利益がつく」という仕組み上、運用期間が長いほど、利益が利益を生む回数そのものが増えるためだと考えられます。利回りが高いほど1回あたりの利益が大きくなるため、その積み重ねの効果も大きくなりやすい、という関係です。
なお、これはあくまで月3万円・利回り一定という今回の試算条件での結果です。積立額や利回りの前提が変われば、具体的な倍率は変わります。また、実際の運用では市場の変動により、想定利回りが毎年一定で続くとは限りません。市場変動を織り込んだ試算については、資産シミュレーターのモンテカルロ機能(1,000通りの市場変動パターンでの試算)で確認できます。
自分の場合はどうなるか確認する
今回の試算は「月3万円・現在資産0円」という一例です。積立額や現在の資産状況、目標とする年齢は人によって異なります。
複利計算ツールでは、現在の資産額・毎月の積立額・想定利回り・運用年数を入力するだけで、ご自身の条件での将来資産をすぐに確認できます。この記事の試算とまったく同じ計算式を使っているため、条件を変えるだけでご自身の場合の結果がすぐにわかります。入力したデータが保存されることはなく、3分程度で試算が完了します。
より詳しく、税制(NISA・iDeCo)や退職金・年金まで含めた本格的な試算をしたい場合は、資産シミュレーターもあわせてご活用ください。
よくある質問
Q. 利回りは何%で計算すればいいですか?
想定利回りは投資先によって異なり、確実な数値はありません。今回の記事では3%・5%・7%の3パターンで試算していますが、複利計算ツールでは任意の利回りを入力して試算できます。
Q. 複利は本当に年数が長いほど有利なのですか?
今回の試算条件では、運用年数を延ばすほど運用益が増える結果になりましたが、その伸び方は利回りの水準によって変わります。年数だけでなく、利回りとの組み合わせで考える必要があります。
Q. 想定利回り通りに増えるとは限らないのでは?
その通りです。この記事の試算は「利回りが一定で続いた場合」の理論値です。実際の運用では市場の変動により、年ごとに増減があります。市場変動を織り込んだ試算は、資産シミュレーターのモンテカルロ機能で確認できます。
Q. 早く始めるのと、積立額を増やすのはどちらが重要ですか?
どちらも将来資産を増やす要素ですが、資産シミュレーターで試算すると、早く始めるほど複利が働く期間が長くなるため、同じ積立額でも差が広がりやすい傾向が確認できます。積立額を増やす効果とあわせて、複利計算ツールでご自身の条件を試算してみることをおすすめします。
Q. 積立額を増やすのと、利回りを上げるのはどちらが効果的ですか?
どちらも最終資産を増やす要素ですが、効果の大きさは条件次第で変わります。ご自身の積立額を変えた場合の試算は、複利計算ツールで簡単に確認できます。
Q. NISAを使うと何が変わりますか?
この記事の試算は運用益への課税を考慮していない単純計算です。NISA口座で運用した場合、通常であれば運用益にかかる税金が非課税になるため、実際の手取りベースの資産額は今回の試算よりも大きくなる可能性があります。税制まで踏まえた試算は、資産シミュレーターで確認できます。
NISA口座は金融機関によって取扱商品や使い勝手が異なるため、比較して選ぶとよいでしょう。[PR] NISA口座開設先の一例として、松井証券の情報はこちら
まとめ
- 運用年数を延ばす効果と、利回りを上げる効果は、それぞれ単独では語れません
- 今回の試算条件では、利回りが高いほど、年数を延ばした効果がより大きく増幅されるという結果になりました
- 「年数」か「利回り」かではなく、「利回り×年数」の組み合わせで将来資産を考えることが大切です
- ご自身の条件での試算は、複利計算ツールで今すぐ確認できます
